るジャーナリストによって白日の下に晒された、“集団リンチ殺人事件“加害者の現在。これをきっかけに、人間の欲望のマグマが燃え上がり、もうひとつの封印されていた忌まわしい殺人事件が呼び起こされる…。

 人間の欲望、嫉妬の渦、そして真の贖罪とは何かを問いかけるエロティックサスペンスが誕生した。
 歯科医院の受付として働きながら贖罪の日々を送る美しい元美術教師・真理子役に女優紺野千春。愛する人の妻を殺めてしまった過去に苦悩し、頑ななまでの孤独の中で生きる儚い女性が、堪え忍んだ末1度限りの愛に溺れ、全てを捨て再生への道へと歩み出すまでを静謐な感情表現で見事に演じきった。またクライマックスの濡れ場では、美しい肢体をさらけ出し挑んでいる。

 真理子に敵意を剥き出しにし、幸せを掴み取ろうとする女の執念をむき出しにする知佳役にシンガーでもある女優Sharo。若く優しい母そして社長夫人として何不自由なく暮らすも、過去の集団リンチ殺人事件に関わっていた事が明るみになり、今まで築き上げてきた“幸せ”が崩れるのと共に狂気をまとい、全てのものをその執念の渦に巻き込んでいく。

 妻・知佳の過去を突きつけられ、夫として、父として家族への愛ゆえに苦悩する孝史役に、映画『恋人たち』等数多くの映画、TV作品に出演する実力派俳優・山中聡。優しくもどこか優柔不断な母性本能をくすぐる孝史が、雷雨の中真理子と交わるシーンでは一転、力強い渋味のある男の魅力に溢れ新たな一面をのぞかせている。

 孝史・知佳の娘・聖羅役に、映画『スキャナー記憶のカケラを詠むおとこ』でデビューし、アイドルグループ「ミラクルキャンディーベリー」のメンバーとしても活躍する前野えま。真理子にことごとく嫌味をぶつけるもどこか小気味いい歯科医院の同僚役・沙織役に、映画『パッチギ!』やNHK連続テレビ小説「風のハルカ」にも出演した女優・ちすん。妹・真理子の過去の事件により肩身の狭い思いをしながらも、家族としての優しさをあわせ持つ兄・洋一役に、主演映画『月の下まで』で第13回TAMA NEW CINEMAベスト男優賞受賞した那波隆史。真理子が唯一心を開く保護司・綾乃役に、女優・秋本奈緒美。真理子の自立を見守り、友人としての親近感をあわせもつ優しさに溢ふれた演技で、物語を支えている。

 物語のキーマンとなる孤高のジャーナリスト役に、俳優・斎藤工。近年は俳優以外に映画監督としても活躍の場を広げている。本作ではジャーナリストとして世の中の矛盾に斬り込み、真実を見つめる鋭い眼差しが人間の本性をえぐり出していく。

  脚本は本作『クロス』で第39回城戸賞を受賞した宍戸英紀、残酷で人間の心の淵を描き出した本作は「映像化不可能」言われ映画化が難航していたが、宍戸自らが奥山和由プロデューサーに手紙と共に脚本を手渡し、映画化までこぎつけた執念の作品なっている。
 本作の監督は2人。日本を代表する映画プロデューサー奥山和由が共同監督としてタッグを組んだのは、映画『蝉しぐれ』で日本アカデミー賞最優秀撮影賞を受賞し、奥山が製作を務めた『真幸くあらば』、『ばかもの』等の撮影監督・釘宮慎治。釘宮にとっては初監督作品となる。映画プロデューサー、撮影監督の強力なタッグにより、「映像化不可能」とされた『クロス』が完成した。

真の芸術は五感で感じ創造するもの――
盲目のピアニスト・木下航志が自身初となる映画音楽に挑む!

 主題歌「Just a Closer Walk with Thee~輝く明日へ僕は歩く~」は“和製スティービー・ワンダー” 盲目のピアニスト木下航志が担当。日本人で初めてニューヨーク国連本部でライブを行い、2020年東京パラリンピックへの向けパラスポーツの普及の為に開催された「パラフェス2016~UNLOCK YOURSELF~」ではパラアーティストとして熱唱し、透き通る力強い歌声で5000人の観客を魅了した。「映画は観るものではあるが、真の芸術は五感で感じ創造するもの」という奥山の言葉に見事に答え、自身初の映画音楽も担当した。エンディングテーマにもなった主題歌は、ポール・マッカートニーの「レットイットビー」の原曲とも言われている黒人霊歌を基調としおり、木下航志の澄み切った中にも哀しみを秘めた歌声が物語の絡み合った人間の欲望を浄化させていく。

 
 
女と男、そして女―――
乱れ交わる肢体が月明かりに揺らめき、
雷雨の夜を切り裂いていく
 歯科医院の受付として働く、竹上真理子(紺野千春)。化粧気もなく、携帯もテレビも無いアパートでひとり静かに暮らしていた。ある日、犬の里親募集のチラシで子供の頃飼っていたが悲しい別れをしてしまった愛犬によく似ていた犬を引き取ることに決める。引っ越しのため愛犬のアンジーをやむなく手放すことになった平山孝史(山中聡)、妻の知佳(Sharo)、娘の聖羅(前野えま)は、経営していた会社が倒産し生活が厳しくなっていた。幸せに暮らすこの家族だが、妻の知佳には“集団リンチ殺人事件”の犯人グループの1人という隠していた過去があった。週刊ボックスの記者、柳田雄二(斎藤工)によって暴かれた事により、それまでの幸せな生活は一変し、孝史との間にも不穏な空気が漂い始める。ネット掲示板をチェックしていた知佳は、同じ頃に起きた“赤羽不倫殺人事件”の犯人が真理子ではないかと疑い始める。
 孝史は仕事中偶然通りかかった歯科医院で真理子に出会い、アンジーを手放し悲しんでいる娘のために、アンジーを会わせる約束をする。にこやかに話す孝史と真理子に鋭い視線を向ける知佳。真理子に好感を持った孝史はまたアンジーと娘を会わせるためと、真理子と約束をする。孝史と真理子の距離が縮まることを許せない知佳は、記者・柳田に真理子を調べて記事にするように迫る。それを知った孝史は思わず知佳に手を挙げ、家を出て行く。謝罪に来た孝史に対し真理子は「もう、私のところには来ないで下さい」と告げる。
 真理子の過去をさらけ出そうとする知佳の行動はエスカレートし、ネット掲示板に真理子の職場や、盗撮写真を掲載し攻撃していく。しかし、柳田が週刊ボックスに載せた記事は真理子の罪を悔いながら過ごす贖罪の日々を綴ったものだった。それを見た知佳は遂に真理子の職場に乗り込んでくる。孝史と真理子の関係に疑いを持つ知佳は真理子にひどい言葉をあびせる。しかしその夜、「どうしても会いたくなりました」と真理子を訪ねて来る孝史。本気で愛した男の妻をこの手で殺した罪を抱え続ける真理子、10年以上も一緒に過ごした妻が集団リンチ殺人事件の犯人であったことに向き合えない孝史。傷を抱えた2人にとってお互いは救いのような存在になっていたが、“幸せ”になる事を罪と考える真理子は孝史への想いに向き合えずにいた。  久々に家に帰宅した孝史が目にしたのは、ゴミが散乱し荒れ果てた部屋だった。そこに知佳が真理子の部屋へ不法侵入しようとしていたと、孝史の元に警察署から電話が入る。警察署で事情聴取を受けている知佳、駆けつけた孝史、呼び出された真理子。真理子は「もう2度とお会いすることはない」と2人に告げる。仕事も辞め、静かにいなくなろうと引っ越しを進める真理子。  しかしお互いへの想いを抑えきれなくなった孝史と真理子は、雷雨の夜についに関係を結んでしまう。「これっきり忘れてください…」と孝史に別れを告げる真理子。

知佳が求める幸せとは、そして真理子が贖罪の果てに見つけた希望とは―――。